526 Tung Chung Bay ~香港の素晴らしい干潟とそこに生息する生き物たち その1~

c0211532_13311130.jpg


今日はTung Chung Bay(東涌湾)に行ってきた。

今、出張で香港に来ている。
前回に引き続き今回も休みを1日取って、香港の干潟を探索だ!!!

そして今回も忙しいスケジュールの中、案内してくださるのは香港城市大学のビリー博士だ。

今回の場所はTung Chung Bayというところ、漢字で書くと「東涌湾」。この対岸は空港だというのに、マングローブ林があるらしい。
今まで何十回もこの前を通りすぎていたけど、まさかこんなところにマングローブ林があるなんてっ!!!

電車とバスを乗り継いでTung Chung Bayの入り口へやってきた。
まずは林の中のトレイルを歩く。

ここで早速大きなカタツムリを発見っ!
あれ?でもこれアフリカマイマイ (East African Land Snail)じゃ・・・

c0211532_10392596.jpg
■ アフリカマイマイ (East African Land Snail) Achatina fulica

このカタツムリは世界最大級の種で、アフリカ東部から食用としてアジア各地に移入されている。
しかしこれが恐ろしい広東住血線虫という寄生虫を持っており、這った跡を触って、それが口に入るだけで寄生されることもある。
寄生されると好酸球性髄膜脳炎をおこして死ぬこともあるとても怖いもの。

さらに数分歩いて海岸へ。
ここからは長靴でエントリー。

ここは水面からはやや距離があり、赤い花をつけるオヒルギ (Black Mangrove)が生えていた。

c0211532_13450565.jpg
■ オヒルギ (Black Mangrove) Bruguiera gymnorhiza

トレイルにもなっている砂の場所には、よく見ると小さな穴がいくつも開いている。

c0211532_11045605.jpg

c0211532_11050060.jpg

この巣穴の犯人は・・・

日本にも生息しているハクセンシオマネキ (Milky Fiddler Crab)だ!

c0211532_11053330.jpg
■ ハクセンシオマネキ (Milky Fiddler Crab) Uca lactea


白いハサミを振り上げる姿が白い扇を振り上げている姿に例えられて、白扇潮招きと呼ばれている。
体色は真っ白のものや、黄色っぽい模様に黒が入るものなど様々。

c0211532_11052334.jpg
■ ハクセンシオマネキ (Milky Fiddler Crab) Uca lactea


片方のハサミが大きいのはオスだけで、メスは両方とも小さい。

c0211532_11052819.jpg
■ ハクセンシオマネキ (Milky Fiddler Crab) Uca lactea

オスの大きなハサミはメスへの求愛に使われる。
メスに向かって、「こっち来~い。こっち来~い。」とおいでおいでをするのだ。

そして時には喧嘩の武器にも使われる。

c0211532_11053632.jpg
■ ハクセンシオマネキ (Milky Fiddler Crab) Uca lactea


iPhoneを使ってハクセンシオマネキ (Milky Fiddler Crab)の動画撮影にも挑戦してみた。

c0211532_11060461.jpg



■ ハクセンシオマネキ (Milky Fiddler Crab) Uca lactea

小さい方のハサミを使って砂を口に入れているのは、この中の有機物を濾しとって食べるため。
いつでも巣穴の中に逃げ込める様に右側の脚は常に巣穴に入っている。

続いて同じ場所でみられたScopimera intermedia (スコピメラ・インターメディア)。
このカニはかつて日本に生息しているコメツキガニ (Sand Bubbler Crab)と同種とされていた種。

c0211532_11055203.jpg
■ Scopimera intermedia (スコピメラ・インターメディア) Scopimera intermedia


この砂場から川の河口に少し降りると礫と泥が広がっている。
日本でもみられるトビハゼ (Shuttles Hoppfish)はここTung Chung Bayで最も多くみられる魚類。

c0211532_12093610.jpg
■ トビハゼ (Shuttles Hoppfish) Periophthalmus modestus

c0211532_12103653.jpg
■ トビハゼ (Shuttles Hoppfish) Periophthalmus modestus


この場所の石の上に見たこともないような変わった生物を発見。
Platevindex mortoni (プラテヴィンデックス・モートニ)。日本でみられるゴマセンベイアワモチは本種だと思われていたが別種の可能性が高いそうだ。
名前も姿も一体なんの仲間だろうといった感じだが、これでも貝の仲間。
上側に2本の小さな眼がみえる。

c0211532_12271854.jpg
■ Platevindex mortoni (プラテヴィンデックス・モートニ) Platevindex mortoni
S・Tさんにみていただいた。

同じドロアワモチの仲間だろうが、恐らく別種が他に3種も。

c0211532_12353961.jpg
■ ドロアワモチ科の1種 (Onchidiidae) Onchidiidae sp.


c0211532_12360833.jpg
■ ドロアワモチ科の1種 (Onchidiidae) Onchidiidae sp.

c0211532_12363905.jpg
■ ドロアワモチ科の1種 (Onchidiidae) Onchidiidae sp.

難しすぎるっ!!!

巻貝の仲間。これも難しいので同定を断念・・・

c0211532_14170272.jpg
■ 腹足綱の1種 (Gastropoda) Gastropoda sp.

続いて底質が砂で、うっすら水が張っているような場所へ移動。

ここで念願のカブトガニ (Japanese Horseshoe Crab)の幼生をビリーさんがみつけてくれた。

c0211532_12411844.jpg
■ カブトガニ (Japanese Horseshoe Crab) Tachypleus tridentatus

小さくてかわいらしいっ!!!
表面の泥を取り除いた状態。

c0211532_12493509.jpg
■ カブトガニ (Japanese Horseshoe Crab) Tachypleus tridentatus


手のひらサイズの幼生も発見!!!
砂泥の中にある有機物を濾しとって食べている。写真左から右に向かって移動しながら食事しているところ。


c0211532_12493670.jpg
■ カブトガニ (Japanese Horseshoe Crab) Tachypleus tridentatus


■ カブトガニ (Japanese Horseshoe Crab) Tachypleus tridentatus

c0211532_12493668.jpg
■ カブトガニ (Japanese Horseshoe Crab) Tachypleus tridentatus


近くの石の下にいたトカゲハゼ (Walking Goby)。
日本にも生息しているが、個体数が少なく環境省のレッドデータブックでは絶滅危惧ⅠA類(CR)に指定されている。
この絶滅危惧ⅠA類(CR)というのは「ごく近い将来における絶滅の危険性が極めて高い種」という意味。
干潟は生物の宝庫なのに、同時に簡単に埋め立てられるため開発の恰好の餌食にもなる。

c0211532_12561567.jpg
■ トカゲハゼ (Walking Goby) Scartelaos histophorus
S・Tさんにみていただいた。

フタハオサガニ (Hutaha Osagani)。

c0211532_13011026.jpg
■ フタハオサガニ (Hutaha Osagani) Macrophthalmus convexus
S・Tさんにみていただいた。

オサガニ属の1種 (Macrophthalmus)。

c0211532_13162461.jpg
■ オサガニ属の1種 (Macrophthalmus) Macrophthalmus sp.

同じくオサガニ属のカニ、Macrophthalmus erato (マクロフサルムス・エラト)。

c0211532_13162449.jpg
■ Macrophthalmus erato (マクロフサルムス・エラト) Macrophthalmus erato
S・Tさんにみていただいた。
*2017年7月21日にMacrophthalmus tomentosusから変更しています。

こちらは特徴が少ないので同定不能・・・

c0211532_13162582.jpg

脱皮中のクシテガニ (Parasesarma affine)。

c0211532_13273871.jpg
■ クシテガニ (Parasesarma affine) Parasesarma affine
S・Tさんにみていただいた。

巻貝の仲間。

c0211532_14170119.jpg
■ 腹足綱の1種 (Gastropoda) Gastropoda sp.

日本にも生息するオキナワイシダタミ (Monodonta labio)。

c0211532_14170208.jpg
■ オキナワイシダタミ (Monodonta labio) Monodonta labio


続いて芝生のような場所へ。
よく見ると芝生ではなく全て海藻。

c0211532_13072706.jpg

c0211532_13092887.jpg

この場所でよくみられたのがNorthern Calling Fiddler Crab (ホンコンシオマネキ)だ。
香港でみられるシオマネキ類の中でも、ハサミが「W」の形をしているので簡単に見分ける事ができる。

c0211532_13100388.jpg
■ Northern Calling Fiddler Crab (ホンコンシオマネキ) Uca borealis

c0211532_13103503.jpg
■ Northern Calling Fiddler Crab (ホンコンシオマネキ) Uca borealis


モクズガニ科Metaplax属という、日本には生息していない仲間のカニ、Metaplax longipes (メタプラクス・ロンギペス)。

c0211532_13110619.jpg
■ Metaplax longipes (メタプラクス・ロンギペス) Metaplax longipes

巻貝の仲間。

c0211532_13113607.jpg
■ 腹足綱の1種 (Gastropoda) Gastropoda sp.

ちょっと顔をあげると奥には高層ビルの姿が・・・
おかげでここまで来るのはとても便利だが、ここが埋め立てられる日が来るのではないかという不安も・・・

c0211532_14091191.jpg

この干潟での生息数はハクセンシオマネキ (Milky Fiddler Crab)と1位を争うのではないかと思うくらい、たくさんいるフタバカクガニ (Red-clawed Crab)。

c0211532_13311016.jpg
■ フタバカクガニ (Red-clawed Crab) Perisesarma bidens
S・Tさんにみていただいた。

c0211532_13311883.jpg
■ フタバカクガニ (Red-clawed Crab) Perisesarma bidens
S・Tさんにみていただいた。

c0211532_13311130.jpg
■ フタバカクガニ (Red-clawed Crab) Perisesarma bidens
S・Tさんにみていただいた。

マングローブの芽生え。
これはメヒルギ (Kandelia obovata) 。
果実は海水には浮き、淡水には沈むという絶妙な比重。
汽水域という特殊な環境を探し当てるため、果実を海にばらまき、生育するのに都合のよい塩分の場所で沈んで根をはり生息範囲を広げるという賢い方法をとっている。

c0211532_13430309.jpg
■ メヒルギ (Kandelia obovata) Kandelia obovata

こちらもメヒルギ (Kandelia obovata)の若木。

c0211532_13583002.jpg
■ メヒルギ (Kandelia obovata) Kandelia obovata


手前の水際の木はメヒルギ (Kandelia obovata)、奥はオヒルギ (Black Mangrove)。
オヒルギ (Black Mangrove)は水際よりもやや上の場所を好む様だ。


c0211532_13583149.jpg
■ メヒルギ (Kandelia obovata) Kandelia obovata
■ オヒルギ (Black Mangrove) Bruguiera gymnorhiza

今度はマングローブ林を探検!

c0211532_13583178.jpg

ここでビリーさんがみつけてくれたのは
Mangrove Horseshoe Crab (マルオカブトガニ)。
英名が示す通り、同じ海岸でもマングローブの近くでみつかったのには驚き!

c0211532_14074214.jpg
■ Mangrove Horseshoe Crab (マルオカブトガニ) Carcinoscorpius rotundicauda

慣れないとカブトガニ (Japanese Horseshoe Crab)の幼生とさっぱり区別ができないが、本種はより尾剣が長く、その断面が丸くなるので見分ける事が可能。

c0211532_14074308.jpg
■ Mangrove Horseshoe Crab (マルオカブトガニ) Carcinoscorpius rotundicauda

日本にも生息しているシオマネキ (Bowed Fiddler Crab)。
片方のハサミが大きいオス。

c0211532_14081133.jpg
■ シオマネキ (Bowed Fiddler Crab) Uca arcuata

ハサミが両方とも小さいメス。

c0211532_14081020.jpg
■ シオマネキ (Bowed Fiddler Crab) Uca arcuata

マングローブの中を流れる小川の脇の日当たりの悪く、礫になっている場所にとっても鮮やかなシオマネキ類を発見した。
Splendid Fiddler Crab (スプレンディッドフィドラークラブ)だ!
赤いハサミに黒と青の美しい甲。
こんなきれいなシオマネキがいるなんて~!!!

c0211532_14084169.jpg
■ Splendid Fiddler Crab (スプレンディッドフィドラークラブ) Uca splendida
S・Tさんにみていただいた。

c0211532_14084033.jpg
■ Splendid Fiddler Crab (スプレンディッドフィドラークラブ) Uca splendida
S・Tさんにみていただいた。

メスも美しい体色。

c0211532_14084054.jpg
■ Splendid Fiddler Crab (スプレンディッドフィドラークラブ) Uca splendida
S・Tさんにみていただいた。

色々と探索したが、やはりここにしかこのカニはいないようだ。
これだけ広大な海岸なのに半径5mくらいの範囲にしかいない。

恐らく淡水の影響が強い汽水域、マングローブ林、直射日光が当たらない場所、数センチの礫~小石に覆われる底質、石の表面には藻類がみられる。こうった条件だろうか。

それにしてもこの海岸はすごい!

空港のすぐそこにこれだけ豊かな生物相をもった干潟が存在しているなんて!!!
写真を撮っただけでも23種。同定が進めばもう少しこの数は増える。

通い始めて5年になるけど、香港の自然って実はすごいという事にようやく気が付いた・・・

*この記事に登場した種のほとんどをS・Tさんに同定していただきました。ありがとうございました。


<撮影種一覧>
23
<植物>
■ ヒルギダマシ (Grey Mangrove) Avicennia marina
■ オヒルギ (Black Mangrove) Bruguiera gymnorhiza
■ メヒルギ (Kandelia obovata) Kandelia obovata
<貝類>
■ アフリカマイマイ (East African Land Snail) Achatina fulica
■ オキナワイシダタミ (Monodonta labio) Monodonta labio
■ 腹足綱の1種 (Gastropoda) Gastropoda sp.
■ Platevindex mortoni (プラテヴィンデックス・モートニ) Platevindex mortoni
■ ドロアワモチ科の1種 (Onchidiidae) Onchidiidae sp.
<カブトガニ類>
<甲殻類>
■ クシテガニ (Parasesarma affine) Parasesarma affine
■ フタハオサガニ (Hutaha Osagani) Macrophthalmus convexus
■ Macrophthalmus tomentosus (マクロフサルムス・トメントサス) Macrophthalmus tomentosus
■ オサガニ属の1種 (Macrophthalmus) Macrophthalmus sp.
<魚類>


[PR]

by takuyamorihisa | 2016-08-21 21:00 | 香港 | Comments(2)

Commented by メナシスト at 2017-07-11 20:04 x
眼遊さん、お久しぶりです
台灣蟹類誌を手に入れて色々調べてみたところ、M.tomentosusとしていたものはM.eratoのようでした。メールにて画像を添付します。
Commented by takuyamorihisa at 2017-07-16 23:57
メナシストさん

いつもありがとうございます。メール楽しみにしていますね。
台灣蟹類誌、うらやましいです!情報をありがとうございます。このシリーズは面白そうですね!!!
台湾は図鑑もしっかりしたものがあるのですが、香港はびっくりするくらい図鑑類がありません。誰か作って欲しいです・・・